野球のグラブはどんな革で作られているのか。
野球発祥の地・アメリカで今のグラブの原型となる最初のグラブが作られたのは、1800年代後半。作ったのは、大手一流スポーツ用品メーカーの「ローリングス」で素材は「牛革」。
現在もグラブは牛革で作られている。キップレザーやステアハイドレザーなど呼び名は様々だが、「生後〇〇ヵ月から○○ヵ月以内の子牛の皮」や「去勢された子牛の皮」など、皮にするまでの期間や条件などにより呼び名が変えられている。
日本のグラブに使用される牛革のほとんどはアメリカからの輸入もの。一部ヨーロッパやオーストラリアからも輸入されている。国産はわずかである。
なぜ国産牛の革がそれほど使用されていないのか。
日本は「美味しい牛肉-WAGYU」の生産国。国内の肉牛農家の努力により、その肉質や味は世界一と言っても過言ではない。美味しい牛肉は世界へと輸出され、生産高は年々上昇している。
当然「国産牛皮」の流通も増えているはずなのにグラブ用の革に加工されるのはわずか。何故?
理由は国産牛の特徴にある。一般的な国産牛は、欧米の牛と比べると体が小さく、皮の厚さが薄くて硬い。国産牛は外国産の牛よりも脂肪分が多いので皮も柔らかいイメージがあるのだが、なめして革に加工する時に脂肪は取り除かれるため、硬い薄皮だけになってしまう。
外国産の牛は、いい塩梅に脂肪分が少なく皮も厚い。皮から加工したときに、適度に柔らかくコシのある「革」に仕上がるのでグラブに向いているのだ。
徐々に注目を集める和牛グラブ
しかしそんな国産牛の皮をしっかりとグラブ用牛革に仕上げて、「和牛グラブ」を製造しているメーカーは国内に数社存在する。これらのメーカーは「国産牛」の持つ特性を逆に活かして、素晴らしい「和牛グラブ」を作っている。
すでに一部の日本プロ野球の選手は、「和牛グラブ」の持つ素晴らしさに気が付き、メーカーと「和牛グラブ」を使用するスポンサー契約を結ぶようになってきた。
ボールパークドットコムの試み
宮崎県に本社のあるボールパークドットコムは、地元出身で明治大学野球部OBの山内康信氏が代表を務める、野球用品専門の製造メーカー&販売会社である。創業以来、自社製の少年用竹バットや木製バットの製造。販売を手掛け、野球用グラブ製造にも力を入れている。
山内氏は、野球関係の大先輩や現役選手との交流を通して、国内産の野球用品の良さ、特に「安全性と信頼性」を改めて認識。国産の木製バット製造に一層力を入れるようになった。材料にもこだわるようになった。
自然の流れで、製造するオリジナルグラブの材料も国産に替えられないものかと考えるようになった。国産=和牛である。
しかしすでに国産牛革を使った「和牛グラブ」は存在している。単に国産牛の革を使って製造したのでは「二番煎じ」になるのは目に見えていた。Only One にするにはどうすれば良いのか。。試行錯誤が始まった。
地元であることのアドバンテージを活かす
宮崎県産黒毛和牛は、宮崎の特産品として有名である。5年前に開催された「全国和牛能力共進会」において日本一連覇を達成した宮崎牛。宮崎県内の関係者は連覇達成のニュースで持ちきりだった。新聞各社がこぞって大きく取り上げた。
そんな中、山内氏は、日本一の宮崎県産黒毛和牛の皮を野球のグラブに利用できないものかと思いついた!
日本一の宮崎産黒毛和牛の皮を100%使用して、日本一の和牛グラブを作る!「和牛JBグラブ」完成へ最初の一歩を踏み出した。